PCゲーム『ToHeart2 XRated』。
PS2からPCに移殖する際、新キャラとして投入されたのが、久寿川ささら。主人公=プレイヤーの貴明の1コ上で、学園の生徒会長。黒ニーソックス常備。
ソフト発売前にはツンデレキャラという情報が流布していて、いざ蓋を開けてみるとツンデレではなかったが、とんでもない破壊力の持ち主だった。
以下、適度にネタバレ。
ささらルートは、よく言われているように、3部構成となっている。簡単にまとめると、
第1部:ささら編(終業式まで)
第2部:貴明編(新入生歓迎会まで)
第3部:ささらと貴明編(EDまで)
ということになるだろう。
それぞれのパートで、ささらのキャラクターが成長し変化するから、新たな萌え側面が見れ、飽きない。
例えるなら、VF-1→ガウォーク→バトロイドと3段変形して、それぞれの格好良さを持つバルキリーのようなものだろうか。
また、ささらの1コ上で前生徒会長のまーりゃん先輩の突出したキャラクターがメリハリとなって、ささらと貴明だけでは滞りがちになる物語のアクセントとなっている。まーりゃん先輩も『XRated』の新キャラで、卒業後も生徒会室に頻繁に現れる、鳥坂先輩のような存在。
まず第1部は、貴明がささらと出会い、全校生徒に畏れられる存在であるささらの優しさに気付き、それを周囲に認めさせようと努力する中で、頑ななささらの心に分け入っていく物語。
貴明がささらの為に甲斐甲斐しく尽くす理由がイマイチ明解ではないものの、そこは目を瞑って、『TH2』の他ヒロインルートではなかなか見られない貴明の積極的アプローチと、それへのささらのリアクションの変化を楽しもう。
貴明の女が苦手という設定? あんなのは飾りです。エロい人にはそれで構わんのです。
クライマックスの終業式では、貴明らしからぬ大舞台での活躍で、見事にささらの心を開き、全校生徒にささらの隠れた姿を認めさせた。
続く第2部では、他キャラルートでは、るーこ以外は春休みはタマ姉にぶん回されて終わるところを、ささらルートでは貴明は生徒会室に通い詰める。他人に心を許さなかったささらが、貴明に対して少しずつ打ち解けていく。久寿川ささらというキャラクターの魅力を最も楽しめるのがここだろうか。
ところが新学期、それまでささらが独りで切り盛りしていた生徒会に、貴明を介在としてタマ姉~このみ~雄二が所属するようになってからは、貴明のヘタレっぷりに驚き、呆れさせられる。
終業式イヴェントで見せた男前はどこへ行ったんだ?
しかし、貴明がヘタレだからこそ、スク水メイド生徒会長という素晴らしいものが見れるのだ。
あと、4歳になったささらも忘れてはならない。
たまんねえなあ、おい。
このパートに於ける雄二の役回りは気に入らない。恐らく、『TH2』で脇キャラに徹した雄二にも見せ場を作ろう、という配慮ではないかと思うのだが、雄二と貴明の関係を考えると、雄二はむしろ逆の行動をとるだろう。
あと、雄二が貴明に言う、「(ささらの相手は)貴明じゃなくて誰でも良かったんだ」という台詞。あれはおかしい。
誰も気付かなかったささらの優しさを見つけることができたのは、貴明だけだった。それを横からしゃしゃり出てきた雄二に好き勝手言われちゃ堪らない。
その意味で、ささらと貴明の関係は、アッシュと英二の関係に近い。『BANANA FISH』のね。吉田秋生のコミックのね。
タマ姉は、貴明の頼みで生徒会でささらの仕事を手伝いながら、目の前で貴明を奪われるという、このみルートに近い役回りを演じるわけだが、この演出は良かった。
考えてみれば、泣き、叫ぶタマ姉の姿というのはタマ姉自身のルートで見れるからね。他ヒロインルートでは自分の想いを飲み込んで、相手を認め、貴明の背中を押す。これぞお姉さん。
向坂の女は、無粋な真似はしないのさ。
『TH2』では各ヒロイン同士の交流が少ないのが不満だった。複数のシナリオライターが各ヒロインを担当するというシステムの弊害だ。もちろん、そのシステムの長所も認めた上で言っているのよ。
それを解消してくれるのが、ささらルート。
愛佳は委員会繋がりで貴明を生徒会の仕事へ誘うし、由真はチョイ役、花梨はGJ、るーこは大事な役回り、姫百合姉妹もチョイ役、草壁さんは影だけで出演。
やや唐突ではあるものの、最終的に貴明はささらに想いを打ち明け、受け入れられる。ここではまーりゃん先輩が、終業式のお返しだろうか、ベタといえばベタな、貴明とささらに告白の舞台をお膳立てして、見せ場を作る。
第1部では、ささらは貴明に心を開くことで、他の人間にも心を開き始め、閉じ籠もっていた世界から外に踏み出す。
第2部では、貴明はささらの想いを受け入れること、自分の気持ちを認めることから逃げていた状態から、ささらの為に、そして自分の為に、想いを伝える勇気を持つ。
自分にとって異質なものと出会い、葛藤し、受け入れ、互いが互いを糧として成長し、大人になる。
これって、正調のジュヴナイルだよね。ジュヴナイル基準から見ると、かなり良質。
ちなみに、俺にとって2005年の最良のジュヴナイル作品は望月智充監督のアニメ『絶対少年』だった。田菜編では歩、横浜編では須河原という部外者の視点から物語を追って、二重、三重の意味での「他者との交流」を正面切って描いた。ブラボー。
そして問題の第3部。ここが世間ではやたら不評でね。
確かに、まぁーるく収まるところをむきになって抵抗する貴明の決意は理解できないし、その後の展開も強引というか、考えが足りなさ過ぎて、呆れる。
宗田理の一連の小説を引き合いに出す声も聞くが、俺の年だと80年代の邦画がこんなだった。『台風クラブ』とか。
それでも。
貴明がささらに告白→エロスという安直な展開にせずに、敢えて、久寿川ささらというキャラクターが他人との接触を拒絶するようになった理由を説明しようとした、その意欲を買いたい。
俺の解釈では、それぞれに心が成長した貴明とささらが、親や教師といった大人に対しては子供として反抗する、その矛盾を描きたかったのではないかと。
子供でありながら大人でもある年代の、不安定な姿。
だから、ED後の展開には納得している。
貴明の手作りクッキーというエピソードを活かして貰いたかったという、不満は残るが。たった1行書き加えるだけで良かったのに‥‥。
エッチシーンも、見所満載。ささららしいというか、微笑ましいよ。
ただ、ラス前直前でやっちゃうのはどうかな。なんだか、追い詰められた結果の展開のようで、もっと自然に盛り上がって行為に突入してもらいたかった。貴明とささらなら。
ささらシナリオは、三宅章介が担当。三宅は、姫百合姉妹とるーこシナリオ、及び全体のシナリオ統括も手掛けた。
姫百合姉妹もるーこも、ビミョーというか、やりたいことが空回り気味だったよなー。
ささらルートは、他のヒロインルートと比べると1.5倍増しのシナリオに感じる。特に後半部分は、エロゲーシナリオとしては不要に思えるが、だからこそ、追加ヒロインのささらで可能だった。ささらシナリオは、実は、他の企画用に書いて没になったものを復活させたんじゃないか、とも勘繰れる。
ささらとまーりゃんの原画はカワタヒサシが担当。るーこと花梨を描いた人。
カワタさんの、ささらシナリオでの仕事に文句なし。立ち絵もCGもGJ。満足、満喫させてもらった。
ささらシナリオは誤字・脱字が多いというか多過ぎだ。とっとと修正パッチを作りなさい。俺が2周目を始めるまでに。
せっかくのいい話が台無しだよ。
画像は、『XRated』予約特典のスティックポスターより、ささら。
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