ドナ・アンドリューズ『恋するA・I探偵』を読んだ
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コミックマーケット71の収穫、その13。
Anonymous Bookstoreのミステリ小説、『キッドナップ・マーケット -or "The Tragedy of Girl A"』。200円。
A5版で40ページのコピー誌。二段組みで、イラストなし。
以前、コミティアで買った『カルテット・ダンス』を読んで気に入ったので、同シリーズの新刊を買った。
作者は市川憂人。
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コミティア76の収穫、その2。このとき買った同人誌は2冊のみ。
1冊目は狙った本を迷わず買って、貧乏性なもので、それだけで帰ったらカタログ代が勿体ないと、創作小説のジャンルを1周して、気になったこの本を買った。
市川憂人『カルテット・ダンス Welcome to Our Quartette!』。
発行は無名文庫 Anonymous Bookstore。小説の文庫サイズで全196ページ。
表紙を外すと、遊びが隠されている。
買ったあと、創作系同人に詳しい人に、頼まれた本を渡すついでに見せたら、「有名なサークルだよ」って言われた。
予備知識なしに選んだものが世間で評価されてると分かると、嬉しい。
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そういうわけで、映画『犬神家の一族』(2006年、角川ヘラルド)を観た。139分。
公開は12月16日。10月末には東京国際映画祭で上映されている。
『犬神家の一族』は、1976年に角川春事務所による角川映画の第1弾として製作している。
それが今回、角川映画30周年を記念して、市川崑監督、石坂浩二主演という同じコンビで再び『犬神家の一族』が製作された。
その報を最初に聞いたとき、驚き、そして期待が高まった。
俺は、76年版の公開当時はまだ幼くて、『犬神家』を楽しめるような年齢ではなかった。だって怖いんだもん。
それでも、佐清のマスクとか水中から生える2本の足とか、派手で騒々しいTVCMのことは記憶している。77年の『獄門島』なんて、「鵺の啼く夜は恐ろしい」というCMのナレーションが今でも耳に残っているくらい、印象深い。
中学生になって、横溝正史の原作小説を読むようになってから市川崑監督の金田一映画を観るようになり、その世界観に惚れた。
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桜庭一樹のミステリ小説『少女には向かない職業』がGyaoでドラマ化された。8月4日まで配信。
今回初めて、Gyaoのコンテンツを視聴した。PC画面でドラマを観るのに抵抗を持っていたが、想像してたほど悪くなかった。
『少女には向かない職業』では、本編の40分が各10分ずつに4分割されて、冒頭にCMが入る。本編終了後、短いCMを挟んで、次回予告がある。
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6月1日は映画の日。
109シネマズ木場で映画『ダ・ヴィンチ・コード The Da Vinci Code』(2006年、米)を観てきた。150分。
映画化前に、原作が話題になってることを小耳に挟んでいた。
映画館で予告を観て、モナ・リザの解釈にどれだけ壮大なハッタリをかましてくれるのか、いっちょ騙されてみるか、という気になった。
原作は未読。
つか、河岸を変えて一日に映画2本。俺は学生か。
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とらのあな発行の情報誌、とらだよ Vol.64。
いつもの如く、伊藤静のコラム「しゅちにくりんでいこう」のページを開いたら、左のページに目を惹かれた。
そこは門脇舞のコラム「まんが魂すみろっく」のページで、舞太の描いた夢幻魔実也のイラストカットに思わず反応してしまったのだった。
コラムの内容も『夢幻紳士』の単行本についてのもので、舞太は小さい頃に「冒険編」を読んでいたとのこと。
正直、今まで門脇舞の仕事を意識したことはなかったが、『夢幻紳士』を愛読してるなら話は別だ。これから応援しよう。
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桜庭一樹のミステリ小説『少女には向かない職業』がドラマ化され、Gyaoで無料ブロードバンド放送される。
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日本人作家の長編SFを読んだので、気分転換に外国人の書いたミステリを読もう。
ということで選んだのが、ジョセフィン・テイ Josephine Tey の『時の娘 The Daughter of Time』(1951年、英)だ。
以前読んだ北村薫の『六の宮の姫君』を紹介する文で、必ず引き合いに出される作品で、ずっと気になっていた。
勿論、『六の宮の姫君』を抜きにしても、名作ミステリの1冊として確固たる地位を築いている。
日本で初めて紹介されたのは1953年。その際、江戸川乱歩が大絶賛を寄せた。
内容は:
15世紀の英国王、暴君と悪評高いリチャード3世が、ロンドン塔の2人の王子を惨殺したというのは真実か。
ロンドン警視庁のグラント警部は、怪我をした入院中に見たリチャード3世の肖像画から疑問を抱き、退屈しのぎに推理を始める。
英国の歴史を専攻する米青年らと共に、トマス・モアらの著作/文献を読み、そこに書かれたこと/書かれなかったこと、著者の立場、書かれた時期、底本の存在などから推理して、リチャード3世の真実の姿に肉迫していく‥‥。
そこには、リチャード3世とヘンリー7世の敵対関係によって歴史観が捻じ曲げられた、という事実がある。シェイクスピアもそれに加担した。
日本の歴史で言うなら、源平合戦で勝った源氏が平家を悪人として後世に伝えたようなもの。
歴史ミステリだから作者の創作はなく、ただ事実関係の構築に想像力を注入していく。従って、このミステリの醍醐味は、歴史に物語を肉付けしていく過程にある。
グラントは入院中で実際に身動きの自由が無いのに加え、対象が歴史上の事件という点で、二重の意味でアームチェア・デテクティヴの要素を持っている。
俺は英国の歴史に詳しくないので(つか、歴史という科目全般に弱い)、人間関係を把握するのに若干ストレスがあった。巻頭には王家家系図が掲載されているが、ちと分かりづらい。
Wikipediaのイギリス君主一覧のヨーク朝→テューダー朝の過渡を題材としている。
英国人にとっては、この歴史問題ってのは自明のものなんだろうな。
この時代で知ってることといえば、英国のバンド、ハーマンズ・ハーミッツ Herman's Hermits が’65年に放ったヒット曲「ヘンリー8世君 I'm Henry the eighth, I am」(全米1位、ハーマンズは米国での方が人気があった)くらいか。
同曲はバカバカしいコミック・ソング。ヘンリー8世はヘンリー7世の息子で、色々と無茶をやらかした王。
リチャード3世とヘンリー7世の戦いの決着は、即ち、ばら戦争の終着でもあった。ばら戦争は、赤薔薇が紋章のランカスター家(ヘンリー)と白薔薇が紋章のヨーク家(リチャード)の、英国王家を巡る両家の戦いを指す。
魔矢峰夫のコミック『パタリロ!』中に、MI6のバンコランが伯父のバンコランと戦うシリーズがあって、そのサブ・タイトルが「散る薔薇 咲く薔薇」だった。
英国で血縁同士が戦う、という点で、ばら戦争を意識してたのかも。と、『時の娘』を読みながら思った。
グラントのキャラクター、ユーモアのある会話に魅了され、最後まで楽しんで読めた。やはり、名作は名作だ。
『時の娘』の発表は’51年。作者のテイは翌’52年に没している。
邦訳は小泉喜美子。だから、歴史部分の訳も安心して読める。
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以前予告してた、Robert Rodriguez監督作品『シン・シティ』に引用された「コーデリア」の元ネタ、『女には向かない職業』を紹介。
英国の女流ミステリ作家、P.D.Jamesの『女には向かない職業 An Unsuitable Job for a Woman』(´72年)の主人公が22歳のコーデリア・グレイ。
ハヤカワ文庫の巻末の解説で瀬戸川猛資が書いているように、コーデリアと言えばまずはシェイクスピア劇『リア王』の王女の名であり、ジェイムズのコーデリアもシェイクスピア版同様、真摯に健気に事件に立ち向かう。
物語の柱は二本。
ひとつは、共同経営者が自殺したあと、探偵事務所を単独で経営しようと奮闘するコーデリアの物語。
ひとつは、青年の自殺の原因を調査するコーデリアの物語。
調査は一筋縄では行かず、コーデリアは様々な妨害に遭いながら、事件の核心に迫っていく‥‥。
ハードボイルドがかった展開には、まさしく探偵稼業は「女には向かない」と思わせられる。
『女には向かない職業』は、P.D.ジェイムズの初邦訳作品だ。
ジェイムズはこれ以前に、ダルグリッシュ警視が探偵役のシリーズを書いており、ダルグリッシュは『女には』にもゲスト出演している。つまり、『女には』はダルグリッシュ警視シリーズのスピンナウト作品だ。
本流を差し置いて傍流が先に翻訳されたのは、やはり、女の子を主人公にした『女には』の方が、暗く重いダルグリッシュものより一般受けすると判断されたからだろう。
ジェイムズの文章には、読んだ時期が近かったからか、同じ英国の作家、Oscar Wilde(1854~1900年)の『ドリアン・グレイの肖像』と似た印象を受けた。
翻訳は小泉喜美子。小泉は物語の背景をしっかり把握したうえで訳すから、作者の意図を逃がすことはなく、安心して読める。
それで、最初の話題に戻ると、『シン・シティ』で少女、ナンシーが「勇敢な女性の名」としてコーデリアを名乗ったのは、『女には向かない職業』を読んでたんだな、てこと。
助ける者も無く、困難に歯を喰いしばって立ち向かうコーデリアの姿には、確かに勇気づけられる。
さて。
もう1冊は、いしいひさいちの4コマコミック『女には向かない職業』(’97年)だ。
タイトルの「女」には「わたし」とルビが振ってあって、英題は 'An Unsuitable Job for Miss Fujiwara'。
ご存知『ののちゃん』の女教師、藤原先生がミステリ作家に転向する、というストーリイ4コマ。これも『ののちゃん』のスピンナウト作品だ。
舞台は変われど藤原先生は藤原先生で、酒を飲み、だらしなく、男っ気がない。
藤原先生のキャラ×このタイトル、で内容の半分は分かったようなもので、それはいしいのキャラ造型がそれだけしっかりしてるからだよな。4コマでそれだけ存在感のあるキャラクターを作れるのって凄い。
傑作なのが掲載誌で、小説現代、朝日新聞、わんだ~らんど新聞、小学4年生、NECデジタルニュースの各誌。それで発行が東京創元社だもん、狙ってるとしか思えない。
どちらの『女には向かない職業』もお勧めだ。
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Terry Gilliam監督の最新作、映画『ブラザーズ・グリム The Brothers Grimm』(05年、米)が公開中。
観賞前に、グリム童話をおさらいしてみよう。
☆赤ずきん
ミステリ作家、北村薫の処女作『空飛ぶ馬』(’89年、東京創元社)所収の中篇、そのものズバリの「赤頭巾」。
ヒロインである「私」が知り合った絵本作家が書いた絵本の「赤頭巾」を元に、ご存知、円紫師匠が作家の心理を推理する。
元の童話がどのようにアレンジされているか、が推理の肝になっている。小品ながら、奥行きは深い。
今、手元に本がないのは、きっと友達に貸したままなんだな。
☆ラプンツェル
吾妻ひでおのコミック『吾妻ひでお童話集』(’96年、ちくま文庫)所収の「ひでお童話集」内の「ラプンツェル」。発表は多分’80年前後。
魔女に攫われて高い塔に閉じ込められたラプンツェルは、髪を伸ばして逃げようとして魔女に切られて、脚を伸ばして逃げようとして魔女に切られて、手を伸ばして逃げようとして魔女に切られて‥‥終いには村上龍の小説『トパーズ』(’92年、角川書店)のラストみたいな姿になる。
そんな場面も、吾妻の頭身の低いキャラで描くと、シュールになり、ギャグになる。
☆かえるの王子様
Peter Gabrielのアルバム『US』(’92年、英)収録の、'Kiss That Frog'。
ゲイブリエルは、80年代後半から90年代初めにかけて、MTVで才気走ったヴィデオクリップと音楽で楽しませてくれた。英国人らしい、笑えないユーモアのセンスが好きだった。'Kiss That Frog'のクリップも、CG以前のデジタル処理で幻想的な世界を表現してたような記憶がうっすらとある。
TVアニメ『ぷちぷりユーシイ』の#13「ロマンス!恋の魔法は突然に」は、「逆かえるの王子様」だよな。
グレンダ かわいいよ グレンダ。
☆眠れる森の美女
高橋葉介のコミック『夢幻紳士 幻想篇』(’05年、早川書房)所収の「眠れる森の美女」。
森の中の枯れ井戸で行われた、とある殺人事件。青年実業家は森でその殺害現場を夢見て巻き込まれそうになったところを、魔実也に「起こされる」。
この『夢幻紳士』は傑作、よくぞこの形で復活させてくれた。ありがとう、高橋葉介、ありがとう、ミステリマガジン。
☆ヘンゼルとグレーテル
とらのあな発のWebラジオ『開運野望神社』3rd Season 第6回の、『なばいと児童文学』のコーナーで「ヘンゼルとグレーテル」がお題だった。もう更新されてて聴けないよ。
これは、パーソナリティの生天目仁美と伊藤静が、よく知られた昔話を改めて説明し直すという趣旨のコーナーで、分からないところを力技でアレンジしてしまうところが面白い。
「強制イベントで魔女に捕まったヘンゼルとグレーテルは」とか、ホントにこいつらゲーム好きだよな。
☆白雪姫
TVアニメ『新白雪姫伝説プリーティア』だよな。
『プリーティア』で最初に思い出すのが子安の演じた運転手、というのはどういうことだろう。あとは、微妙なバランスの顔だとか、石田燿子の歌とか。
どの辺が白雪姫だったのか、いまいちよく分からないが。
以上、これで準備は整った。
上記アイテムをどこで入手するとかいう考えは棚に上げる。
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北村薫のミステリ小説『六の宮の姫君』(東京創元社)を読了。
「円紫さんと私」シリーズ、4作目。前作に引き続き、1冊丸々の長編。
今作で主人公・私は、大学4年生になって卒論の準備と就職活動に忙しい。
タイトルの『六の宮の姫君』は、文学部の「私」が卒論のテーマに選んだ芥川龍之介の、短編のひとつ。
「私」はあることをきっかけに、芥川が『六の宮』を書いた経緯を、前後の著作、交友関係、書簡などを手掛かりに調べていく。
つまり、『六の宮』(北村作の方ね。ややこしい)はミステリ作品とは言っても、殺人も強盗も誘拐も起こらない。
作家が書いた短編にはどのような意図が込められていたのか。
その謎には、作者・芥川が故人となった今となっては、正解はないかもしれない。
しかし、「私」が図書館や古書店で入手した本(当然、実在する本)や、円紫さんの的確な導きに助けられて辿り着く結論は、読んでいて充分に納得のいくものである。
死体の数や手口の残虐性を誇るだけのミステリの、なんと軽薄なことよ!
文学的な謎解き、なんて言うと難解なイメージがあるかもしれないけど、これがまた極上のエンターテインメントなのさ!
「私」がある作品・ある記述をヒントに謎を読み解いていく過程はスリリングで、芥川と『六の宮』の関係はドラマチックでさえある。芥川の生そのものがドラマチックでもあるわけだけど。
芥川や文学に詳しくなくても楽しめる。
史実をヒントに謎を解いていく、という点で、解説ではテイの古典ミステリの名作『時の娘』(早川書房)を例に挙げてるけど、読んでないのでピンと来ない。
俺は寧ろ、梅原猛著『隠された十字架 法隆寺論』(新潮社)を思い出した。
「私」は、芥川について調べながらも、学校に通い、アルバイトをし、旅行に出かける。
その先々で、過去のエピソードの後日譚が語られて、さながらシリーズの集大成のよう。
実際には、まだ続刊してるけどね。
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ミステリチャンネルで放送中の「探偵講談『まだらの紐』」を観た。
講談という演芸ジャンルは、話や活字で見聞きしたことはあっても、実演を見るのは初めて。
お題は「まだらの紐」で、ご存知コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズ物の1篇。話の筋は分かっているので、講談の芸に集中できた。
正直南湖の語り口は軽妙で、舞台設定は原作に則りながらも、荒くれ者の親爺はがさつな関西弁で喋り、ホームズは畳の上を調べ、笛の音が聞こえるのは丑三つ時、という調子。
ホームズ物は探偵小説であって推理小説ではないので、複雑な謎はなく、講談の演目には丁度いい。これが金田一耕助物だったら、話で聞くだけじゃチンプンカンプンだ。
10分程度で噺は終わり、前半終了。
後半は、講談ファンであり探偵講談の復興に尽力している作家の芦辺拓と、正直南湖の対談。講談の現状、探偵講談の今昔などについて話された。
楽しく、他ではなかなか見られない内容なので、ミステリチャンネルを受信可能な人にはお勧めの番組。
面白かったので調べてみた。
正直南湖のHPはこちら。
ああっ! 南湖CDに、川崎ゆきおの「猟奇王」が収録されてますぜ、大将。
現在品切れか、残念!
あの夜の大阪の街をひた走る『猟奇王』の世界が、講談でどう表現されていたのか、非常に気になるところ。再販を求めたい。
同人誌を中野ブロードウェイのタコシェに置いてるとのことなので、今度行ってみよう。
正直南湖は、大阪では隔月、東京では年2回舞台を持ってるとのことなので、次回は都合をつけて是非行ってみたい。
でも、次は8月って言ってたかなあ。8月は色々イヴェントがあってキツイなあ。
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読了。したのは随分前。
ネタバレはしないように以下感想。
「円紫さんと私」シリーズ第3弾。
前2作が中篇ミステリを集めた作品集だったのに対して、今回は長編。1冊丸々で1つの事件を追う。
また、これまでは軽犯罪~犯罪にすらならないもの、悪意の存在、といったものが推理の対象だったのに対して、今回は死亡事件を扱う。
ミステリの長編は、複数の事件を複雑に絡ませたり、事件以外の要素で引っ張ったりして、冗長気味になりがち(チャンドラーみたく上手くやる場合もあるにせよ)。
『秋の花』では、主人公の女子大生の日常を丁寧に描きつつ、身の回りで起こった事件に関わっていく様子が綴られていく。この「日常と事件」の対比というか並置というかが絶妙で、北村の上手さを味わえる。
死ぬ人が1人じゃ物足りない、なんていうのは巷に溢れるミステリ小説に感覚が麻痺してるから。
主人公は、知り合いの死の謎を繊細な手つきで探っていく。一人の死をしっかりと受け止めながら。
また、死んだ女子高生の生前の様子や周りの人々が魅力的に描かれ、その分だけ少女の死が重く感じられる。ミステリ作品で死ぬのは1人で充分なんだよ。その死が丹念に、適切な形で描写されるのならば。
ある程度ミステリを読んでる人なら、この事件の犯人が分からない筈はない。
ただ、「円紫さんと私」シリーズはフーダニットよりホワイダニットを重視していて、今回も例に漏れず、犯人の目星がついてもその動機が皆目見当がつかず、それだけに事件の不気味さが迫ってくる。
そして、相変わらず伏線が上手い。
さりげなく挿入された一場面が、読み進んだ後になって実によく効いてくる。その配置の上手さに、読んでいて思わず溜息が出る。
残念なことは、円紫さんの噺が1席しか聞けないこと。
中篇なら全然不満なかったんだけど、長編でもひとつだけ、というのはちと物足りない。このシリーズは、円紫さんの噺と事件が微妙にリンクしてるところも魅力のひとつなのだし。
そもそも、探偵役の円紫さんが登場するのは物語が半ばを過ぎてからだもんな。
そんなわけで、いよいよ次は傑作の誉れ高い第4作『六の宮の姫君』なんだけど、その前にちょっと別傾向の作品を読んでおこう。
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『お嬢様は名探偵』
98年にNHKで放送されたシリーズ3本を、ミステリチャンネルで再放送。
原作は北村薫の「覆面探偵シリーズ」。
北村作品は、「円紫さんシリーズ」第3弾を現在読書中、「覆面~」は買ってあるけど未読。
先にドラマで観るのもどうかと迷ったものの、これを逃したらいつまた放送されるか知れないので、観た。
主演のともさかりえがイマイチ。二重人格のお嬢様、という難役に負けてる。
原田龍二は、素朴な好青年を素朴に演じた。
伊原剛志は、がさつな兄貴をがさつに演じた。
三浦理恵子がサブヒロイン。秋本奈緒美が出てた。
感想は、う~ん、「円紫さん」で感じられる北村らしさが味わえなくて残念。
これは、ドラマの演出に原因があるのか、そもそもの原作がこうなのか。
つか、ドラマを観る限りでは「覆面」になってないのが気になる。いや、ドラマ版では「覆面」って謳ってないんだけどさ。
「円紫さん」は、犯人探しのフーダニット・手口解明のハウダニットよりは動機追求のホワイダニットに主眼が置かれていて、『お嬢様』でも同様。
それがカタルシスに繋がらないのは、演出の力量不足か。北村ミステリのファンはドラマ部分を期待してる筈なのに、無理にアクションを見せようとするから。
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