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S-Fマガジン 2009年5月号 2/3

続き

5月号ではもう一つ、昨年7月に拳銃自殺した「トマス・M・ディッシュ追悼特集」。
監修:若島正。

先のベイリーは71歳、ディッシュは68歳で亡くなった。
60~70年代のSFを支えた世代の訃報はこれから多くなっていくんだろう。

Thomas M. Disch
☆「ナーダ Nada」(1964年、米) 訳:田中一江 イラスト:佐治嘉隆

特殊児童学校に勤める教師、オヴィータは、受け持ちの一人の生徒に目をつけていた。
その少女、ナーダは、故意に鈍重な振りをしているように見えた。オヴィータはナーダの描いた絵を見て、その才能の片鱗を確信する。
そしてある日、彼女をメトロポリタン美術館に連れ出して…。

ディッシュの長編デビュー前の短編。
宇宙や未来世界や超能力の直截的な描写はなく、ほのめかしに終わる。非SFジャンルに分類されてもいい味わいの作品。
夜の公園でのオヴィータと小男が会話するシーンが好き。こっちの世界に潜むあっちの世界を垣間見るようで。
この作品をフェミニズムやらと結びつけるのは早計なんだろう。

☆トマス・M・ディッシュ&ジョン・スラデック「ダニーのあたらしいおともだち Danny's New Friends from Deneb」(1971年、米) 訳:酒井昭伸

ビーチにあそびにきたダニーは、そこでデネブからきたみどりいろのこどもとしりあいになりました…。

平仮名で平易に訳されたブラックな味わいの掌編。
俺が真っ先に思い浮かべるディッシュ作品は『いさましいちびのトースター』なわけだが、これはその15年前に書かれている。
児童向けを装ったスタイルで、おそらく隠された意図もなく、シチュエーションの巧みさで読ませる。

☆「ジョイスリン・シュレイジャー物語 The Joycelin Shrager Story」(1975年、米) 訳:若島正 イラスト:佐治嘉隆

ドナルドは映画技師の仕事の傍ら、アングラ映画界のカリスマ誌の編集をしていた。
ドナルドはある日、自主制作の自伝映画『生の舞踏』を撮影し続けるジョイスリンと知り合い、恋に落ちる…。

映画と映画批評の関係を描いた非SF作品。初出も文芸誌だった。
ある意味、ダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』のようでもある。
果たして、ドナルドは幸せになったのだろうか?

その他、

☆牧眞司「崖の上のトマス」

ディッシュの作風を意識するあまり歯切れの悪くなった追悼文。

☆柳下毅一郎「ディッシュは神だった!」

ディッシュの遺作となった「The Word of God」を話の中心に、晩年のディッシュ像に迫る。

☆中藤龍一郎/福本直美/牧眞司「トマス・M・ディッシュ 邦訳著作解題」

☆編集部「トマス・M・ディッシュ 主要著作リスト&特集解説」

続く

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