S-Fマガジン 2009年5月号 1/3
Barrington J. Bayley
☆「邪悪の種子 The Seed of Evil」(1973年、英) 訳:中村融 イラスト:中村亮
二十二世紀の地球に、太陽系外からの初めての訪問者があった。
齢100万歳のゾウガメに似た異星生物は地球への移住を申し込み、地球側もそれを受け入れる。
野心的な医師のジュリアンは不死の秘密を解き明かさんと、不死身と呼ばれるその生物の誘拐を企てる…。
不死の秘密を得るためなら犯罪をも厭わないジュリアンと、文化的な立場から不死身を保護する行政官のコードン、この二人の対決かと思わせながら、意外な展開を見せる後半はさすがベイリー。
不死に関するオチは、まあ、発表当時は新鮮だったんじゃないかな。
☆「神銃 The God-Gun」(19797年、英) 訳:大森望 イラスト:中村亮
多才の持ち主でありながら、その才能を己の関心のためにしか使わない男、ロドリックは、ある日、神を殺す方法を見つけたと語った。
そして研究室にある自作の装置の説明を始めて…。
「無神論者であるが故に神から自由になりたい」と言い放つロドリックのキャラクターが強烈。
神を傷つける武器の論理、それを作動させた結末、どこを切ってもベイリーらしさに溢れた短編。
☆「蟹は試してみなきゃいけない A Crab Must Try」(1996年、英) 訳:中村融 イラスト:中村亮
雄蟹のブラウン・マントルは仲間とつるんで、雌蟹を追いかけたり酔いどれ藻をよろしくやったり、愉快に毎日を過ごしていた。
しかし、雌蟹と交尾できるのは、雄蟹のうち1%にも満たないのだ…。
英国SF賞短編部門を受賞したのも頷ける、独特の味わいを持った佳品。
ベイリーにしては派手な仕掛けはないが、1匹の蟹の生の背後に読者は時間と空間の広がりを見る。
その他、
☆大森望「特集解説」
ベイリーは専業作家ではなかったのか…英米本国より日本でより売れた本もあるって言うし。
安易にニューウェイヴに迎合しなかったからこそのベイリーのスタイルだったか。
☆殊能将之「ベイリー・ドゥルーズ・山田正紀」
追悼エッセイ。
山田正紀はともかく、ドゥルーズを引き合いに出すのは考え過ぎだろう。もしかして、飛躍した発想こそがベイリー的ってオチ?
☆山本弘「ベイリーはNWだったのか? 〈架空の対話〉」
追悼エッセイ。
山本がベイリーを好きというのは、分かる気がする。
☆北原尚彦/中村融「バリントン・J・ベイリー 邦訳著作解題」
☆編:林哲夫「バリントン・J・ベイリー 主要著作リスト」
続く。
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